安堵

実家に兄弟が揃ったのは3年ぶり、父親の葬式以来だ。 父親が元気だった時の母親は、家の建て替えを希望していた、子供達も建て替えを希望していた。 しかし、状況は変わってしまった。 兄弟が3年ぶりに会っても、母親の前で父親の話はあえてしない。 家を継いだ長男、「今日は泊まっていくだろ?」 私、「良いの?」 長男、「当たり前じゃないか、お前にとっては実家なんだから」 久しぶりに帰郷した私は、母親の手料理を食べたかったのだが、三食とも義姉(長男の奥さん)が作ってくれた。 義姉が作ってくれた料理は、母親が作るのと似てはいるのだが、何か違う。 兄と二人きりになったため 私、「家はどうするの?」 兄、「分からない」 私、「義姉さんは何と言ってるの?」 兄、「アイツ(義姉)がとやかく言うことではない」 翌日 昼から仕事があるため、朝早く実家を出ようとすると 母親、「貴方は、どうしたい?」 私、「何が?」 母親、「家のことが心配で帰って来たのでしょ?」 私、「家を出た僕が決められることではないよ」 母親、「・・・」 母親が黙ってしまったのは、父親が残した家は既に兄に相続させていたから。 母親の本音はどっちなんだろう? 父親が元気だった時に言っていた建て替えが希望なのか、それとも、家族の思い出が残る家を残したいのか。 正月、母親から荷物が届いた。 荷物の中身は、父親の形見と最近、兄が撮ったと思われる写真。 写真には、外壁塗装でキレイになった実家の前で、笑顔で腕を組む母親と義姉が映っていた。

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